股関節の脱臼は犬猫で度々認められ、落下や事故などにより様々な方向に脱臼を起こします。
また、股関節形成不全や筋力の低下する疾患に併発する場合もあります。
股関節の状況や経過、再脱臼の有無などにより治療法を決めていく必要があります。
<原因>
交通事故や落下などによる強い力がかかり脱臼が起こる外傷性の脱臼が一般的です。簡単な力で脱臼が起きてしまった場合にはもともと股関節の緩みがあるような股関節形成不全や甲状腺機能低下症やクッシング症候群など、筋力の低下を起こすホルモン病などが根本に存在する可能性があります。
<症状>
通常は股関節の痛みや歩行異常、足の挙上などを起こすことが一般的です。
稀に慢性的な脱臼の場合には見た目上無症状の場合もあります。
<診断>
歩行検査や整形学的検査にて股関節の疼痛の確認、三角テストなどで脱臼の有無の確認を行います。
レントゲン検査にて脱臼の有無や方向、関節の状況(骨折がないか、変形性関節炎がないか)を確認します。
関節構造を詳しく調べるためにCT検査も有効です。
<治療>
治療は非観血的整復(手術しないで脱臼を戻す)と外科療法に分けられます。
これらは骨折や変形性関節炎の有無、脱臼してからの時間、再脱臼の有無などを考慮して選択していきます。
- 非観血的整復
手術を行わず、脱臼を手で戻します。脱臼の方向によりやり方は異なりますが、脱臼を整復したのちに包帯をしばらく巻き、再脱臼を防ぎます。
脱臼を整復するには通常は痛みを伴うのと、筋肉を弛緩させ戻しやすくするために鎮痛剤と短時間の麻酔が必要となります。
- 外科治療
非観血的整復では脱臼を戻すのが難しい場合、再脱臼を起こしてしまう場合、変形性関節炎や骨折などを伴う場合などは手術による治療が必要となります。
大きく分けると温存的手術と救済的手術に分けられます。
温存的手術
手術により関節を戻したのち、関節は温存したまま再脱臼を起こさないように固定を行います。
固定法は様々で、関節包再建術やトグルピン法、創外固定を用いた方法などがあります。
救済的手術
温存的手術を行っても再脱臼を起こしてしまう場合、変形性関節炎が強い場合、関節部の複雑な骨折がある場合など、関節を残すのが難しい場合には救済的な手術が行われます。
救済的手術としては大腿骨頭切除術(FHO)や股関節全置換術(THR)があります。