肩関節脱臼

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執筆:

elms-united
2020年6月2日

肩関節の脱臼は犬で時々認められ、様々な方向への脱臼を起こす可能性がありますが内側に外れる内方脱臼が一般的です。
脱臼を起こすと痛みや歩行の異常が起こり、軽度であれば脱臼を戻した後に包帯を巻いて固定したり、内服薬により改善することもありますが、脱臼を繰り返してしまう場合や重度の脱臼では手術による治療が必要になります。

<原因>
先天性と外傷性に分けられます。

先天性ではもともと内側の関節包や靭帯が緩んでいたり、関節の発育不全があることにより内側に外れることが殆どです。
外傷性は落下や事故などにより脱臼を起こすことが一般的ですが、トイプードルなどの犬種では少しの力で内側に脱臼を起こす傾向があります。
また、肩関節不安定症という完全に脱臼はせずに肩に不安定が生じることで軽度の跛行を起こす疾患もあります。

<症状>
肩関節に痛みが起き、前足を完全にあげてしまったり、歩き方の異常が認められるのが一般的です。
特に外傷性の場合には症状が強いことが一般的です。

<診断>
整形学的検査やレントゲン検査により診断を行います。
肩関節の不安定症の検査もまずは触診にて緩みがないかの検査を行います。
関節構造の異常を確認するためにCT撮影や関節鏡検査が勧められる場合もあります。

<治療方法>
温存療法と外科治療に分けられます。

温存療法

骨折などがなく、正常な関節を持ち急性の脱臼を起こした場合(脱臼してからあまり時間が経っていない場合)や、症状の軽い慢性的な脱臼、肩関節不安定症の場合には適応となります。
脱臼を整復したあと包帯で固定し、運動の制限や消炎鎮痛剤の投与を行います。

外科療法

関節包や靭帯の損傷を伴う重度の脱臼の場合や、脱臼が繰り返してしまう場合、不安定により症状が強い場合などは手術による治療が適応となります。
脱臼の方向や程度により手術の方法は異なりますが、関節を残して腱や人工靭帯を使って脱臼を防ぐ方法と、関節の固定術に分けられます。

◎靭帯の再建術
内方脱臼では人工靭帯を使って関節内側の靭帯(内側関節上腕靭帯)の再建術を行います。
特殊な人工靭帯(アンカースーチャー)と金具(エンドボタン)を用いて壊れた靭帯の機能を持たせ、内側に脱臼するのを防ぎます。

◎関節固定術
肩関節の骨折がある場合や重度の関節炎などがある場合、靭帯の再建術などを行っても脱臼を起こしてしまう場合には肩関節の固定術を行います。
肩関節を固定しても歩き方に違和感が出ることは少なく、多くが一般的な生活を送れるようになれます。