検査方法

監修:エルムス動物医療センター八幡山院 センター長 獣医師 高瀬雅行

執筆:2019年5月19日

どうぶつの整形外科の検査方法とは

足の異常が認められる場合、以下のような検査を行い、「何が、どこで起こっているのか?」骨折であれば「どこでどのように折れているのか?」などを特定していく必要があります。動物は何が異常かを直接訴えてくれず、関節炎などの整形外科疾患の場合には症状もわかりづらいことが多いため、適切な検査が適切な治療のために重要になります。

一般身体検査/血液検査

落下や交通事故などを起こしている場合、足の異常に注意がいきがちですが、実は胸やお腹の中でさらに大きな異常/命に関わる異常が起きている可能性があります。
すぐに足の検査に入るのではなく、通常の診察と同じように聴診や触診、体温測定など身体検査を実施して、足以外の異常が起きている可能性がないかを調べることも重要です。
また、出血や臓器の損傷の可能性を調べるため、その後の治療で麻酔が必要であれば麻酔が可能かを判断するために血液検査を行います。
また、リウマチや多発性関節炎などの免疫性の関節炎などが疑われる場合、診断のためにも血液検査が重要になります。

整形外科検査

一般身体検査を行った後、整形学的検査を行っていきます。整形学的検査には、「視診」「歩行検査」「整形学的触診」などが含まれます。
これらによってどこでどのような異常が起きているのかを特定していきます。 骨折の場合には触診で強い痛みを起こしてしまう可能性が高いので無理な触診は行いませんが、脱臼/靭帯の損傷などでは整形学的検査がとても重要となります。

|歩行検査

実際に動物に歩いてもらい、歩行の異常を検査していきます。 怪我や病気の種類によっては、特徴的な歩き方の異常を示します。 歩き方の異常から、どの足が異常なのか?足のどの場所がおかしいのか?などを調べます。

|整形学的触診

歩行検査の後、実際に動物の体を触っていき、異常部位/疾患を特定していきます。
整形学的触診はまず立った状態で行い、可能であれば動物に横になってもらい、丁寧に骨や関節、靱帯などを調べていきます。
痛みがあるのか?どの部位にあるのか?一箇所なのか複数箇所なのか?関節に緩みがないのか?など、動物の体を隈なく検査することで異常を判断していきます。 整形学的触診は動物の運動器疾患を診断していくのにもっとも重要な検査の一つと言えます。

整形学的触診の例
・ドロワーテスト/脛骨圧迫テスト
膝の靭帯(前十字靭帯)を痛めた可能性がある場合には重要な検査です。靱帯が緩む、切れると膝の異常の動きが検出されます。

・オルトラニテスト
股関節の緩みを調べる検査です。股関節に力をかけ、脱臼/亜脱臼するかどうかを調べます。

・肩関節外転検査
肩の緩みを調べる検査です。肩をゆっくり外側に開いていき、過剰に動かないかどうかを調べます。

レントゲン検査

特に骨折や脱臼などの足の異常の場合、レントゲン検査が必要となります。
やみくもにレントゲンを撮影するべきではなく、整形学的検査で異常が疑われた部位のレントゲン検査を行っていくことが重要です。
関節の緩みや靭帯の断裂の場合には、特殊なレントゲン撮影が必要となります。 通常は無麻酔で行いますが、痛みが強い場合や関節の正確なレントゲン撮影を行う場合などは鎮静/麻酔が必要な場合もあります。

CT検査

通常の骨折や脱臼ではCT検査まで必要になる事は少ないですが、骨盤や脊椎の骨折など複雑な形の骨の骨折の場合、粉砕骨折などレントゲンでは把握が難しい骨折の場合にはCT検査も有用です。
交通事故の場合などは複数箇所の骨折が起きていたり、胸やお腹の中の異常を起こしている可能性もありますので、CT検査が有効です。
また、関節の形成不全や異形成、離断性骨軟骨炎(OCD)など特殊な整形疾患でもCTが重要です。

関節鏡検査

関節の中を、特殊な関節鏡装置を用いて検査を行う方法です。
通常は大きく関節を切開して関節の中を検査していきますが、関節鏡検査では小さな皮膚切開から関節鏡を関節内に入れ、関節内部の観察を行い、関節の異常を診断することができます。また、関節鏡用の手術器具を用いることで関節疾患の治療を行うことも可能です。
通常よりも検査の侵襲が少なく、機能改善が早いこと、肉眼では観察・診断が難しい病変も関節鏡で拡大して詳しく観察できることがメリットです。
関節鏡は特殊な器具、かつ技術も必要な検査なので、行える施設は限られますが、特に前十字靱帯の検査や治療などでは非常に有用です。

関節穿刺/関節液検査

関節に針を刺し、関節内の関節液を採取し、その性状を調べる検査です。
免疫性の関節炎(多発性関節炎やリウマチなど)や関節の腫瘍などが疑われる場合には重要な検査です。

神経学的検査

骨折や脱臼以外にも椎間板ヘルニアなどの神経の病気でも足の異常が起こることがあります。また、強い怪我の場合には骨の異常とともに神経の損傷も認められる場合もありますので一緒に簡単な神経学的検査も行い、もし神経の異常があればより詳しい神経学的検査を行い、検査により脳・脊髄などの神経異常が疑われる場合にはMRIやCT検査が必要になる場合があります。